RENOSYアプリでのデータドリブンによるPDCAサイクルの実現

はじめに

RENOSYチームの遠藤です。iOSアプリエンジニアをやりつつ、データアナリストも兼務しております。

私達が担当しているRENOSYアプリでは、データを活用した数値改善を行っており、今回はこれまでに行ってきた具体的な取り組みについてお話したいと思います。

なのでエンジニアリングの話ではなく、マーケティング寄りの話になることをご了承いただければと思います。

RENOSYアプリについて

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www.renosy.com

RENOSYアプリは2019年1月末にリリースした中古マンションが探せる不動産アプリです。

主な特徴は以下です。

  • チャットで相談から内見予約まで行える!
  • チャット相手はRENOSYの自社エージェント。
  • 新着物件もいち早く通知でお届け!

RENOSYアプリの実績

リリースから約半年で、物件の反響数(お問合せ数)やCPAが大幅に改善しました。

特に、直近3ヶ月においては、前月比に対してほぼ倍のペースで数値が向上しています。

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※3ヶ月前を100%とした場合の推移

ファネル分析によるデータの可視化

どうやってここまでの改善に繋げることができたのかについてですが、一言でいうとファネルを意識し続けた結果だと考えています。

以下は、リリース時のRENOSYアプリ(iOS)のファネルを可視化したものです。

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ここでいうファネルについては、以下の理解でよいかと思います。

ユーザーがアプリを起動し、お問合せに至るまでの主要な導線上の段階に、どれだけのユーザーが到達できたかを表すもの

これにより入り口のユーザー数を100%とした場合、それぞれの段階(フェーズ)でユーザーの到達率がいくらかがわかるようになります。

上記リリース当初のファネルから、私達は「規約同意」と「問合せ」のフェーズで、影響度の高いユーザービリティの課題があると考えました。

「規約同意」の改善

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そこでまず、「条件入力」から「規約同意」のフェーズにおける遷移フローを変更しました。

リリース当初は「条件入力」→「物件資料請求」→「規約同意」と3ステップのボタンタップアクションが必要でしたが、私達はここにユーザーが脱落に繋がるハードルがあると考えました。

そこで「物件資料請求」画面を排除し、「条件入力」と「規約同意」が1回のボタンアクションで同時に行えるように変更し、ステップ数を3から1に減らすことにしました。

「問合せ」の改善

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またリリース当初は、メールによるお問合せしか行うことができませんでした。

ここもユーザーにとってはハードルが高かったようで、リリースから約2ヶ月間、お問合せがほとんど来ないという問題に直面していました。

そこで導入したのが、アプリ内でのエージェントとのチャット機能です。

このチャット機能によって、ユーザーはエージェントと直接電話したり対話せずとも、スキマ時間で物件について相談することができるようになりました。

これは自社エージェントが社内にいて、ユーザーが不動産を探すところからお問合せ、内見、契約に至るまで一気通貫できるRENOSYだからこそ、実現できた機能ともいえます。

施策リリース後で大幅に数値が改善

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施策のインパクトは絶大でした。

「規約同意」においては、当初の29% → 61%と2倍以上に改善しました。

「問合せ」においても、0% → 3%と改善し、お問合せが増加しました。

可視化したことで、やせ細っていたファネルの肉付きがよくなったことがひと目でわかると思います。

次に「物件詳細閲覧」の改善に着手しました。

プッシュ通知による運用を本格的に開始

ここではPush NotificationとFirebaseを活用して、以下のプッシュ通知機能を実現しました。

  1. 希望の条件にマッチした新着物件通知機能

  2. RENOSY担当者からの問いかけメッセージ通知機能

①新着物件通知機能について

事前にサーバー側の実装で各ユーザーに対してFirebase上で発行されるTokenを保存しておくことで、ユーザーごとに動的に内容の異なった通知が送れるようにしています。

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最初は一物件ごとに通知を送るという仕様にしていましたが、これだと通知が多くなりすぎて煩わしいという問題がありました。

そこで、最近ニュース系のアプリが多く採用している1つの通知内で複数の記事を紹介する見せ方を採用し、1つの通知内で複数の新着物件情報を紹介するという仕様に変更しました。

あくまで直感的な話になりますが、この変更によって通知の煩わしさの解消だけでなく、より見やすい印象になったと感じています。

問いかけメッセージ機能について

こちらは、Firebase Cloud Messagingを使って手動で通知を送っています。

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Firebase Cloud Messagingは通知発信タイミングを予約できるので、ユーザーが多く閲覧してくれるタイミングを見計らって通知を送るようにしています。

また文面や見せ方を工夫することでも大きくインパクトが異なってくるので、運用担当者の腕の見せどころでもあります。

「物件詳細閲覧」の大幅改善

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結果、この施策も大きく改善効果に繋がりました。

「物件詳細閲覧」ファネルが、45% → 67%に改善しました。

「条件入力」ファネルにおいても、61% → 75%と改善が見られました。

「条件入力」の改善については、おそらく離脱していたユーザーの復帰に繋がったのではないかと捉えています。

ファネルが全体的に太って、良い感じになってきました。

※ファネルを採用したメリット

ここで一つ、ファネルを用いることによる付加価値についてお話させてください。

すでに気づいた方もいるかもしれませんが、この施策においてはアプリの起動ユーザー数に対して、問合せユーザー数の割合がほとんど変わっていません。

つまり、もしファネルを使わずに入口と出口の数字しか見ていなかったら、「このプッシュ通知施策は意味なかったね」という判断になり、工数が無駄だからさっさとやめようという結論に至っていた可能性があります。

これは特に忙しい時ほどやりがちだと思うので、注意が必要です。

現在は「チャット問合せ」ファネルを改善中

ファネルがだいぶ肥えて、奥まで水が十分に溜まってきたので、いよいよ蛇口を広げる(チャット問合せを改善する)段階にきました。

とはいえ、この時点では「物件詳細閲覧」から「問合せ」かけて、現在約95%(= 3% / 67%)のユーザーが離脱していることがわかります。

そこでさらにフェーズを分解することで、より具体的にユーザーの脱落ポイントを探るようにしています。

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例えば、上図のように「チャットエリアのタップ」がその間のフェーズとして考えられます。

また必ず通ることになるフェーズではないのですが、「物件のお気に入り登録」「新着物件通知からの起動」といったアクションも、より問合せに繋がる確率が高いとなった場合はフェーズにしてしまって、そのフェーズの数値改善にフォーカスするのも良いかと思っています。

つまりは、「物件詳細閲覧」を行ったユーザーがその後どういったアクションを経て、「問合せ」というゴールに向かうのかを知ることが現時点の課題だと考えています。

さいごに

このようにして、私達はRENOSYアプリをデータドリブンにPDCAを回しながら数値改善を繰り返しています。

ここまで読んでいただいてありがとうございました!

この辺りもっと知りたいとかノウハウ情報交換など、どしどしお待ちしています。